「未来永劫、終わらない」、八海醸造の地域と共に生きる経営(後編)

南魚沼を代表する銘酒、『八海山』とそのふるさと長森を巡る旅。

「魚沼の里」など八海醸造の運営する施設を訪れると、同社の南魚沼の町と人と自然に対する、強い「地元愛」がひしひしと伝わってきます。

■地域の人々へ暮らしの豊かさを提案

長森の里に本社のほか、2つの蔵を構える八海醸造。里を支える存在として、地域貢献を意識した経営が特徴的です。
その代表的存在といえるのが、八海醸造本社から車で数分のところにある、「魚沼の里」。銘酒『八海山』の一大製造拠点である第二浩和蔵を中心とした社員用施設のほか、田舎そば店や洋菓子店、ライフコンセプトショップなど一般の方向けの施設も充実しています。

これらは南魚沼の食文化や暮らしを発信する観光施設であると同時に、地域に住む人々へ豊かなライフスタイルの提案の場としての役割も。このため、社員食堂を年中問わず開放していたり、洋菓子店でのお菓子づくり教室を開催したりと、訪れた人が日常を楽しめるような仕掛けが盛り込まれています。

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Photo by Yoji Amanatto

■周囲の景観に根ざした施設の設計

地域貢献に根差した経営は、それだけではありません。
過去には、本社前の公道の整備や、『八海山』の大事な原料である水を源流から蔵へ運ぶための水道管の整備を八海醸造主導で進められたこともあるとか。本来ならば、公道も水道も地域インフラのため行政が主体となるところを、積極的に関わりを持ったといいます。

また、先に紹介した「魚沼の里」は、周辺に配慮した設計も大きな特徴。あえて建物を点在させたり蔵や古民家を活用したりなど、自然と田畑が調和した長森の里の景観にうまく溶け込みつつも、現代的な美を感じさせ、どれも高いセンスを感じます。

Photo by y.amanatto
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■古くからの雪国の知恵を今に生かす

「魚沼の里」の敷地内、傾斜に沿うように大地に半分収まるように建つ、片流れの大きな屋根が特徴的な建物は、“八海山雪室”と呼ばれる2013年に開設した施設です。

Photo by y.amanatto
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雪室とは、冬の間に降り積もった雪を敷き詰めることで、温度を一定に保たれた天然の冷蔵庫。新潟をはじめ、雪の多い地域に古くから存在し、食品の保存などに用いられます。
八海山雪室で使われる雪の量は、なんと1000トン。夏の間もすべての雪がとけきることはなく、雪室内は電気のエネルギーを使うことなく年中4℃前後をキープ。雪国ならではの知恵を生かして日本酒や焼酎の貯蔵・熟成が行われています。

■地域との共生を図る理由とは

地域住民の集いの場の提供や、施設や食の提案を通じた雪国文化の発信など、なぜ同社はこれほどまでに地域との共生を図るのでしょう。その理由は、同社の基幹商品である“日本酒”の存在があります。
日本酒は、米と麹、そして水でその品質が決まります。シンプルな原料だけにごまかしがきかず、よい日本酒を多くの人々に届けるには、よい米とよい水がなければできません。そしてよい米があるのは、地元の農家のみなさんが手塩にかけて稲を育てたからであり、よい水が得られるのは、魚沼の豊かで美しい自然があるからこそ。また、同社に勤める社員の多くも南魚沼の人たちです。

Photo by y.amanatto
Photo by y.amanatto

同社は、銘酒『八海山』が南魚沼の人々の丁寧な暮らしと里への愛情によって支えられていることを、心の底から理解しているのです。
八海醸造は「未来永劫、終わらない会社」を目標に掲げています。それは、日本酒づくりから生まれる、魚沼の豊かな暮らしの循環を守ろうとする決意と覚悟の表れといえます。